Pick up Archi!! - 2025




日比谷OKUROJI
設計:交建設計+吉田裕一ほか 竣工:2020年(改修) 所在:東京都千代田区内幸町1丁目
有楽町-新橋駅間のレンガ・アーチ式高架橋(1910年)、鉄筋コンクリート・ラーメン構造高架橋(1942年/1964年)の表情を違える鉄道高架橋下をリノベーションした商業建築。レンガアーチ内壁と鉄筋コンクリートを白くペイントしてニュートラルな装いとして、レンガのマテリアルと鉄筋コンクリートの柱梁のフレームのもつ構成美のそれぞれを際立たせる。シンプルな操作で巧みなデザインが施されている。




板橋区立熱帯環境植物館
設計:瀧光夫 竣工:1994年 所在:東京都板橋区高島平八丁目
隣接する板橋清掃工場の余熱を活用して植物園(一部水族館機能を併設)である。植物園としては平面上は小さいが、折り返しながら4層分を昇っていく動線とし、これを活かして水流が流れた先を水槽とする計画としている。中央に斜めに架け渡したブリッジで高い植物を間近に見せるなど、植物・生物の展示と建築空間の体感とのバランスに優れ、見学の最後に植物園全体を見渡せる視点場を計画していることも美事。




東松山市総合会館
設計:白江龍三 竣工:1992年 所在:埼玉県東松山市松葉町1丁目
東松山市の中心市街に建つ文化会館。円形プランを基調とし、ヴォールトのボリュームになる多目的ホールを交差することで全体の形状を構成する。求心的で閉じた形状となりやすい円形プランながら、螺旋状に立体的に構成するランドスケープを挿入させ、中央には地下1階から上部までを突き抜ける吹抜を貫入してこれと繋ぐ(地下1階は館内ながら外気に接する)。図と地が随所で反転する不思議な空間を織り成す。




御香宮神社
建立:1605年(本殿)、1625年(拝殿)など 所在:京都府京都市伏見区御香宮門前町
全国的にも珍しい神功皇后を主祭神として祀る古社である(応神天皇を主祭神とするのが一般的)。伏見城大手門を移築したと伝わる表門を潜った先に割拝殿が建ち、その奥に五間社流造の本殿を構える。社殿の大きさに崇敬の厚さをうかがわせると共に、本殿・拝殿ともに徳川家の関与によって江戸時代初期に建立されたこともあり、極彩色を纏う壮麗な出で立ちをもつ。




千葉県南総文化ホール
設計:岡田新一 竣工:1997年 所在:千葉県館山市北条
幹線道路脇に建つ県立の文化ホール。中庭を中心に北側に大ホール(1200席)、南側に小ホール(300席)、東側に会議室・練習室を並べる。中庭の角度を振り軸線をずらし、メインエントランスに誘い、かつ大小ホールのホワイエを形づくる造形操作は美事。道路境界を壁面で囲いアプローチも中庭状にしており、平面・立面ともに端正な構成である。鮮やかに映える陶壁「白く、強く、太陽、を」は中村錦平の作品。




畠山記念館(現・荏原 畠山美術館)
設計:菊竹清訓 竣工:1964年 所在:東京都港区白金台2丁目
荏原製作所の創業者・畠山一清が収集した茶道関係を中心とした美術品を展示・保管する美術館。軒先を銅板で覆った軒の出の深い屋根、テラスを支持する腕木状の部材、真壁を思わせる白く塗った壁面など、収蔵品の性格とクライアントの要望もあったであろう和風の装いを纏ったモダニズム建築である。展示室内に立つ柱を蒔絵のようにして美術工芸品の如く彩り、インテリアとして成立させるための苦心の跡を感じさせる。




さいたまスーパーアリーナ
設計:日建設計 竣工:2000年 所在:埼玉県さいたま市中央区新都心
大宮操車場跡地を開発した新都心整備事業の1つで設けられた国内最大級の多目的アリーナ。通常は北側に19,000席のメインアリーナ、南側(正面側)にコミュニティアリーナが並ぶが、メインアリーナ南側半分の座席(ムービングブロック)が可動し、約30,000席のスタジアムになるという可変するシステムを採用している。ファサードを特徴づける片持ち梁の大屋根は、この特殊なシステムを採ることによる。




北九州市立美術館
設計:磯崎新 竣工:1974年 所在:福岡県北九州市戸畑区西鞘ケ谷町
北九州の中心市街から少し離れた丘陵地に建つ市立美術館。磯崎新が1970年代に展開した「手法論」を実践した建築の1つで9.6mの立方体をベースに構築するというが…「丘の上の双眼鏡」と呼ばれるように2本の角型チューブの印象こそ大きい。階段の踊場や2階通路を吊り下げ、展示室を内包する大梁として機能しており、大分県立大分図書館や西日本シティ銀行本店本館に連なる建築としての見方もできそうである。